第54回 群馬大会によせて

 全国高等学校演劇協議会の第54回全国大会は、第32回全国高等学校総合文化祭(高総文祭)群馬大会の演劇専門部として八月八・九・十日の開催となる。会場となる桐生市市民文化会館はJR桐生駅と東武伊勢崎線新桐生駅との中間に位置する落ち着いた環境にあって、空中に飛ぶ船型のデザインに見えるりっぱなホールである。

 演劇部門としては例年のとおり昨年秋よりの各地区予選大会、都府県大会、そして九ブロック大会を経ての最終コンクールとしての発表の場である。昨年度より出場一校増を図り、本年はその二年目に当たって東北ブロックより二校ということで十二校の出場である。

 第一回より継承している指導者講習会の名称のとおり、演劇を通して共に学び合う創造的総合的な教育活動の一環としての意義は今日一層注目されてきており、より広くより深く各学校における取り組みが進められるよう望まれる。大会として、従前よりの専門審査員による実のある講評そして分科会の活動、さらに定着した生徒講評委員会の活動等を通じ、ご参加の皆様共々に学習を深めていきたく願っている。

 本年開催地の桐生という地名は絹織物の産地として古くより知られている。具体的なことは地元からのご紹介として、市内には織物を初めとする地場産業のセンターもあるようで、また地理的には赤城山への出入口でもあり、わたらせ渓谷鉄道沿いの景観、上流の草木ダムや近くの富弘美術館など。大会終了の翌日は月曜のため休館にはご留意を。いずれにしても、文化としての演劇と、開催県の文化的風土とは深いつながりを持つものと思われるので。

 その他、高演協として、年間を通じての事柄として、まず著作権問題。昨年度もいくつか問題として各地で取り上げられてきたわけだが、何よりも著作権者に許諾を得るという具体的なことをぜひお忘れなく。すでに不在となっているなど実際には面倒な場面もあろうが、ともかくやらなければいけないことにぬかりがあっては通らないということ。当事者の責任といえばそれまでだが、それぞれの大会の折に組織としてのチェック機能を有効に働かせれば、と思う。問題となってからでは手遅れでかえって面倒となる。また、よく分からないことは相互に遠慮なく話し合うことも必要であろう。たまたま群馬で十一年目を迎えた今日、お互いに改めて真摯にこの問題と向き合う機会といたしたい。

 次に、春の全国高校演劇研究大会もこの三月に正式の第二回目を実施することができた。「自由劇場」を提供してくださる劇団四季のご協力に感謝すると共に、各ブロックより参加出場の各校の熱意にも深く感謝をいたしたい。年度末という時期に参加に要する経費なども含めてのご苦労も多いことと思われるが、それぞれの学校の舞台を拝見して、年度内開催による部員一同の一体となっての思いが強く感じられ、夏の大会とはまた一味異なる特色を発揮できるような期待をも持っている。夏はコンクールとしての総合点からの推薦校とすれば、春は、より個性的で特色の強いものの発表の場となるような可能性も感じている。研究大会と名付けたのもさほど深い意味があるわけではないが、全国の演劇指導の先生方にとって、例えば個人的な研修として、年度末に上京されてご覧になる機会ともなろう。近場ならば生徒の日帰り観劇も可能である。なお、この大会も高文連との共催となっている。

 八月末の国立劇場での優秀校東京公演も例年どおりに実施の予定。

韓国の高校との交流も一月七日に来日した京花女子高等学校が東京世田谷のパブリックシアターで開催の東京私立中学高等学校演劇発表会に参加公演をみた。本会名誉会長内木文英氏のご尽力と東京私立中高の演劇関係の皆様のご協力によるものと特記いたしたい。

 最後に、群馬大会開催の関係者皆様に深く感謝を申しあげます。

永嶋 達夫

(全国高等学校演劇協議会会長)
(学校法人 十文字学園
十文字中学高等学校校長)


ようこそ 群馬大会へ
上州に舞え創造の風

第32回全国高校総合文化祭
第54回全国高等学校演劇大会

 第54回全国大会の開催にあたりまして、開催県を代表してご挨拶申し上げます。

 群馬県は関東地方の北西部に位置し、「鶴舞う形」で親しまれている内陸県です。北部は尾瀬、谷川から赤城山の山並み、西部は妙義、榛名、浅間山といった豊かな山岳地帯が広がり、自然の要砦といった趣をなしています。一方南東部は、谷川連峰を水源とする「坂東太郎」利根川によって形成された雄大な関東平野が広がり、古代より多くの人々が生活の場としてきた地域でした。利根川流域には数多くの古墳群を見出すことができます。現在でも、大きな土木事業が計画されるたびに、大掛かりな遺跡調査の行われる様子が県内のあちこちで見られます。

 そのような土地柄の群馬県は、古くから畑作、稲作だけでなく、養蚕、製糸業、さらには織物業の盛んな土地柄でありました。すでに八世紀中頃には「新田郡淡甘郷より黄あしぎぬ一疋を朝貢」を記す文献があるのだとか。昨年、世界遺産登録を果たした石見銀山は先催県の島根県にありますが、奇しくもその石見と登録を競い合ったことで皆様の記憶に新しい「官営富岡製糸場」は本県富岡市にあります。本県から生まれた絹糸や絹織物は、絢爛な能装束をはじめ、古来、日本文化を華やかに彩り、支えてきた重要な要素でした。また、近代においては対外貿易の重要な輸出品として、日本の近代化の原動力となりました。それは、ひいては近代日本の文化興隆を下支えする力でもあったはずです。

 本大会の会場となります桐生市は、「西の西陣・東の桐生」と呼ばれ、近代日本の幕開けとともに、繊都としてたいへん栄えた町であります。桐生市市民文化会館の住所は「織姫町」です。これから数多くの熱演が繰り広げられる桐生市市民文化会館の大ホールに「シルクホール」の名が冠せられているのも、そうした桐生市の歴史にちなんで命名されたものに違いありません。ご来場にあたっては、桐生織物をあしらった緞帳もぜひじっくりとご覧下さい。

 産業があり、人の集まる所に文化は生まれるのでしょう。このような伝統から、桐生は昔から、官民ともに文化・芸術の活気に満ち溢れた町でもあります。無頼派の文人坂口安吾が人生の最晩年を過ごした町でもあります。戦後ほどなく市営の動物園(桐生が丘動物園)が開園されました。国内外の優れた美術品を数多く収蔵する大川美術館は市民の手によって開設されています。古きよき時代に建てられた「のこぎり屋根」の工場、倉庫などの建物跡が、現在では文化施設という新しい命を吹き込まれ、プロの芸術家演劇に携わる高校生をはじめとする、多くの市民が文化活動を営む拠点となっています。

 本年一月には関東ブロック大会がここ桐生市で開催されたこともあり、今、桐生には高校演劇の熱い風が吹き渡っています。日頃、演劇創造に情熱を注がれている高校生諸君や顧問の先生方、あるいは高校演劇に熱い思いを寄せて下さる多くの皆様を本会場にお迎えすることができますことは、決して偶然ではなく、浅からぬ縁あっての事と思います。お迎えする群馬県実行委員会の係役員一同、至らぬ所も多々あるかとは思いますが、精一杯皆様のお世話をさせていただく所存であります。

 結びにあたりまして、本大会開催にあたり、会場地である桐生市を始め、多くの関係者の方々の多大なるご支援、ご協力を賜りましたことを深く感謝申し上げ、歓迎のご挨拶とさせていただきます。

立見 賢治

(第54回全国高等学校演劇大会会長

群馬県高等学校教育研究会
演劇部会会長

群馬県立伊勢崎清明高等学校長)

 

義理人情の地  上州へようこそ
 雷とからっ風の地、群馬へようこそ。義理人情とかかぁ天下の地、上州へようこそ。

 誤解のないよう書き添えておきますが、「かかぁ天下」とは「女性が強い」というわけではありません。戦前まで養蚕と織物が盛んだった群馬では、女性が重要な働き手・稼ぎ手であり、「家計を握ることが多かった」ということです。その分、男性がのほほんとしていることは否めませんが。

 その証拠といってはなんですが、群馬県が本格的に全国高等学校総合文化祭の準備を始めたのは一昨年というのんきさでした。そんな全く危機感のない状況にありながら、群馬県演劇部会では6年前から全国大会の準備を始めていました。これはひとえに前事務局長の先見の明によるものです。5年前の関東大会で、全国大会を見越して会場を桐生市市民文化会館に変更。以来、ホールスタッフや照明・音響の業者の皆さんとのおつきあいを深めてきました。この実績が、会場や業者の決定に際してどれだけ役立ったことか。

 前事務局長は、現在、総文祭推進室に勤務し、演劇部会を支えてくれております。おかげで推進室との意思の疎通がスムースに行くようになり、私が頭を抱える回数は確実に減っています。

 だったら準備もスムースにいったかと言うと、さにあらず。私自身、右も左も分からず、何から手をつけてよいのかすら判断に迷うといった手探りの状態でした。なんとか開催まで無事にこぎ着けることができたのは、全国高演協事務局の方々や、先催県の青森、京都、島根の先生方のお力添えがあったからこそです。また、県内演劇部会が一丸となっていたことも非常に大きな力になりました。さすがは「義理人情の地」群馬です。

 一方、何より大変だったのは、やはり群馬県全体が「のんき」だったこと。焦っているのは推進室と一部の文化部の先生方のみ。県内全体で協力体制を整えたくてもなかなか理解が得られないという状態が今年の4月まで続きました。さすがは群馬。男性がのほほんとしています。これが国体やインターハイですと、かなり状況が違うのでしょうけれど。

 第54回全国高等学校演劇大会が群馬県で開催されると言うことには、非常に大きな意義があります。正直に申し上げますが、群馬県全体を見渡してみますと、高校演劇に対する理解があるとはお世辞にも言えません。肩身の狭い思いをしている演劇部も少なくありません。いえ、演劇自体に対する関心は高いんです。それは、桐生、伊勢崎、前橋といった主要な市で毎年演劇祭が実施されていることからも伺われます。桐生市に至っては、市自体が高校演劇をバックアップすべく、年2回無料で会場を提供してくださっています。ところが、学校現場ではあまり理解されていない。かつて私は、文化祭での上演を観た校長からこんなことを言われたことがあります。

 「いや〜、こんなに本格的だとは思わなかったよ。白雪姫とかシンデレラとかやるんだと思ってた。」

 学校現場の全ての方とは言いませんが、多くの方がこのような認識でいらっしゃるのだと思います。実際には見ていないのに。恐るべき「思いこみ」です。

 ちなみにこの校長は、文化祭以後全面的に演劇部を応援してくれるようになり、上演は欠かさず見に来てくださいました。

 全国大会は、こういった「思いこみ」を払拭する貴重な機会です。

そのためには、まず大会を盛況のうちに無事に終えること。そうすることで、学校現場において少しでも演劇部に対する理解が深まってくれることを願ってやみません。

青山 一也

(第54回全国高等学校演劇大会
  群馬県実行委員長

群馬県立桐生南高等学校)

 

分科会 ★ 変更
 分科会が当初の予定した5分科会から6分科会に変更になりました。

 会場にてプログラムとともに、講習会参加希望調査用紙を配布致しますので、大会2日目終了までに、所定の場所にご提出くださいますようお願い致します。

第1分科会「劇 作」……川村 毅氏(劇作家・演出家)

                伊藤隆弘氏(中国ブロック)

第2分科会「ワークショップ」…オーハシヨースケ氏(俳優)

第3分科会「舞台美術」…石井強司氏(舞台美術家)

第4分科会「生徒講評」

第5分科会「部活動」……影山吉則氏(北海道ブロック)
                北市邦男氏(中部日本ブロック)

第6分科会「演劇を見る」……山口宏子氏(演劇評論家)

↑上へ